Column 4 中野グルメ
虎月堂
江戸時代より前から、商売の鉄則として伝えられている事がある。それは、人通りの多い場所で物を売った方が商売繁盛するということだ。
もちろん、この鉄則がどんな場合においても当てはまるとは限らない。人通りの多い駅前のお店が突然無くなってしまう事もあるだろうし、逆に、路地裏のお店に行列ができることもある。
ただ、人目に付きにくい場所で商売を繁盛させるということは、おそらく、並大抵の努力では難しいのではないかと思う。他店には真似できない丁寧な接客サービスや、良質の商品を作り続けなければ、わざわざ人は足を運ばないからだ。
逆に言えば、他店には真似できないサービスや商品を持っている店というのは、わざわざ人通りの多い場所で宣伝をしなくても、長い年月の中で、人の口から人の耳へと伝わっていくようにできているのだ。
どの街にも一軒や二軒は、そんな貴重なお店があるかと思うが、ここ中野にはJR中野駅と、丸の内線新中野駅のちょうど真ん中辺りに、人がわざわざ足を運んでしまう貴重なお店がある。
それが「虎月堂(こげつどう)」と呼ばれる和菓子店だ。
虎月堂は、決して人通りが多い場所にあるとは言えないのだが、店主やスタッフの商売に対する姿勢や商品への愛情が評判を生み、中野で約40年以上も愛され続けているお店なのだ。
虎月堂の和菓子は「安心・安全」を心掛けて作られている為、総勢10名のスタッフの手によって1日に販売する分だけを、その日の早朝に作り上げているという。
ディスプレイに並べられている商品は、ところ天・あんみつ・どらやき・水ようかん等があるが、特に、栗一粒を丸ごと入れた栗まんじゅう「黄玉満(こうぎょくまん)」の評判が高く、この商品は2009年中野逸品グランプリで、最優秀逸品賞「タイガース・マンスリー・栗ーミー賞」を受賞したほどの人気商品でもあるのだ。
店主の日野さんにお話を伺った。
「確かに人通りは少ないですね。それでも、足を運んでくださるお客様はいらっしゃいますから...日々を誠実な態度で、そして丁寧に接する事を心がけているつもりです。
同じような事を毎日繰り返していますが、これまでの行動が長い年月をかけて信頼や評判に繋がっていると信じているので、これからも誠実な気持ちで和菓子を作り続けたいですね。
最近は、若い人達も来店してくれるので嬉しいですよ。若い子は和菓子なんて食べないと思っていたから(笑)長い間続けてきた甲斐があったのかな?」
確かに、食べてみると若者に人気があるという理由も納得できる。ただ甘いという印象を受けなかったのだ。
また、日野さんのお客様へ対する想いは尽きることなく、近年は、食べる前から和菓子を楽しんで欲しいという願いから、お店の内装や紙袋を、佐藤勝彦さんという有名な画家にプロデュースしてもらったという。
綺麗な袋の中にある美味しい味は、きっと自分が楽しむ為だけでなく、誰かにプレゼントしたくなる優しさを秘めているのだろう。
今年の夏は、かわいい袋に包まれた栗まんじゅうと水ようかんを持って里帰りするのも良いと思う。
虎月堂(こげつどう)
住所:中野区中央5-40-15-103
電話:03-3384-0082